病気のお話

病気のお話

HOME >  かわクリニック  > 病気のお話

病気のお話

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染症について

●ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)とは?
このエントリーをはてなブックマークに追加

胃は食物を消化するために胃酸を分泌しています。このため、胃はpH1~2の酸性に保たれているため、通常の細菌は生存することはできません。長い間胃の中には最近は存在しないと考えられていましたが、1982年オーストラリアのウォーレンとマーシャルは、胃粘膜にらせん状の細菌を発見しました。これが、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)です。ピロリ菌は、ウレアーゼと呼ばれる酵素を自分の周りに分泌して尿素をアンモニアに変えることで、自分の周りの酸を中和し、胃の中で生き延びています。


●ピロリ菌が引き起こす病気は?
ピロリ菌を発見したマーシャルは、ピロリ菌が入ったスープを自ら服用しました。すると、数日後に嘔気・嘔吐を生じ、内視鏡検査で急性胃炎を認めました。これにより、自らの体を使ってピロリ菌が胃炎と関連していることを証明しました。その後ウォーレンとともに研究を進め、胃・十二指腸潰瘍との関連を明らかにしました。(後にウォーレンとマーシャルはこれらの業績を認められ、2005年ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。)また、ピロリ菌感染胃炎が持続すると炎症により胃粘膜が薄くなる慢性胃炎(萎縮性胃炎)を生じ、長い経過の中で腸上皮化生(胃粘膜が腸管の上皮に置き換わった状態)から胃がんが発生することがわかっています。このほか、ピロリ菌は胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、胃ポリープ、機能性ディスペプシア、鉄欠乏性貧血といった病気を引き起こします。

※多発性胃潰瘍・ヘリコバクターピロリ感染胃炎の内視鏡の写真画像は下部にございます。


●ピロリ菌の診断は?
ピロリ菌の診断に用いられる検査は、「内視鏡を用いる方法」と「内視鏡を用いない方法」に分けられます。

1.内視鏡を用いる方法(生検組織を用いる)
①迅速ウレアーゼ試験
生検組織を試薬内にいれ、ピロリ菌が産生するウレアーゼと反応するかを見る検査です。
②鏡検法
生検組織を標本にして、顕微鏡でピロリ菌を見つける検査です。
③培養法
生検組織を培地で培養し、ピロリ菌を検出する検査です。
除菌療法の際に必要となる抗菌薬に対する感受性の判定もできます。

2.内視鏡を用いない方法
①尿素呼気試験
ピロリ菌が産生するウレアーゼにより、胃内の尿素は分解され、アンモニアと二酸化炭素が産生されます。胃内の二酸化炭素は呼気中に排泄されます。この原理を利用し、検査薬(13C-尿素)を服用後に排出される二酸化炭素13CO2を検出することで、ピロリ菌感染の有無がわかります。
②抗H. pylori 抗体測定
血液や尿中のピロリ菌に対する抗体を検出する検査です。
③便中H. pylori 抗原測定
便中に排出されるピロリ菌抗原を検出する検査です。


●ピロリ菌を除菌すると胃はどうなるの?
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんの約90%がピロリ菌が陽性であったという報告があります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍は再発を繰り返す病気ですが、ピロリ菌の除菌を行い成功すると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発が抑えられることがわかってきました。また、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の患者さんで、ピロリ菌の除菌を行い成功すると、除菌を行わなかった場合に比べて胃がんの新たな発生が1/3になっていたという報告もあります。ピロリ菌の除菌で胃の炎症が改善し、胃がんの予防効果があると考えられています。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌により生じる多くの疾患の治療と予防のために、すべてのピロリ菌感染者に除菌療法を行うことが強く勧められています


●保険診療で行われるピロリ菌除菌療法の流れは?
保険診療で行われるピロリ菌の除菌療法の対象疾患は、H. pylori 陽性の胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃です。これらに加えて平成25年からはヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が加わり、除菌療法の対象となる方が増加しています。一回目の除菌で失敗した場合は二次除菌を行うことが可能で、二回目の除菌までで95%以上の確率で成功します。

1.感染診断
ピロリ菌の感染があるかどうかを調べます(感染診断) 。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が疑われる場合は、内視鏡検査を行い、ピロリ菌による胃炎を確認することが必須となっています。
2. 一次除菌療法
ピロリ菌を退治する治療を除菌療法といいます。プロトンポンプ阻害薬という胃酸を抑える薬剤と2種類の抗菌薬(アモキシシリン塩酸塩、クラリスロマイシン)の組み合わせで7日間の内服を行います。除菌の成功率は70〜80%です。
3.除菌判定(一次除菌)
一次除菌終了後4週間以降に除菌が成功したか確認する検査を行います。当院では主に尿素呼気試験を行いますが、便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査を組み合わせることもあります。除菌判定が陰性であれば、治療終了です。除菌判定陽性であれば二次除菌療法を行います。
4.二次除菌療法
一次除菌療法に失敗した方が対象になります。一次除菌の薬の組み合わせのうち抗菌薬のクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更したものを7日間内服します。成功率は約90%です。
5.除菌判定(二次除菌)
二次除菌終了後4週間以降に除菌が成功したか確認する検査を行います。当院では主に尿素呼気試験を行いますが、便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査を組み合わせることもあります。除菌判定が陰性であれば、治療終了です。除菌判定陽性であれば三次除菌療法を行うことがありますが、現在は保険適応外です。


●内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の確認が必要な理由は?
ピロリ菌除菌の治療薬の添付文書には「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に用いる際には、ヘリコバクター・ピロリが陽性であること及び内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎であることを確認すること」と記載されています。これは、胃炎がピロリ菌で生じていることや胃がんなどの重大な疾患の有無を確認する必要があり、それらを診断するためには内視鏡検査以外の方法はないと考えられるからです。内視鏡検査を行うことで、胃の「炎症」と炎症の結果生じる「萎縮」の程度を評価することができます。萎縮性胃炎は胃がん発生の高リスクとなりますので、たとえ無症状の方でも内視鏡検査は必須です。


●除菌療法で注意すべき点は?
アレルギーがある方は必ず医師に申し出て下さい。
除菌療法の成功率を高めるために、除菌療法の薬は指示通りに確実に内服して下さい。自己判断で内服を中止すると、除菌療法に失敗するだけでなく、抗菌薬に耐性を持ったピロリ菌を生じさせることがあります。また、除菌療法中はアルコール摂取は控えて下さい。(特に二次除菌療法中のアルコール摂取は、メトロニダゾールがアルコール代謝を妨げるため、嘔気・腹痛を引き起こしやすくなります。)


●除菌療法の副作用は?
一番多く見られるのが軟便・下痢です。これは除菌療法に含まれる抗菌薬により腸内細菌のバランスが崩れることから生じます。また、味覚障害や肝機能異常を生じることがあります。このような症状は除菌療法が終了すると回復します。発疹やかゆみといったアレルギー症状や腹痛・発熱・血便を生じた場合はすぐに内服を中止して、診察を受けて下さい。


●除菌療法終了後の注意点は?
除菌療法を行うことで、胃がんの発生を抑えることが明らかになっていますが、胃がん発生のリスクがゼロになるわけではありません。除菌療法終了後も、胃がんの早期発見のために定期的に内視鏡検査を受けましょう。胃の症状が改善することで食欲が増加し、体重が増えることがありますので食べ過ぎに注意しましょう。また、これまで抑えられていた胃酸分泌が回復することで、逆流性食道炎を生じることがありますが、ほとんどの場合症状は軽く、治療が必要になることはまれです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

ページの先頭へ戻る