胃がんリスク検診

日本脳炎の発生とワクチンメーカーの責任

今回は、感染症の予防に重要なワクチンについてです。

 先ごろ、長崎県対馬で日本脳炎の発生があったと報道がありました。
4例の発生でいずれも8月から9月に発症し、入院が必要となりましたが、幸いにもいまは軽快されているようです。
詳しくは長崎県が出しているプレスリリースをごらん下さい。

 「日本脳炎」といっても、ほとんどの方はピンとこないと思います。
それもそのはずで、日本での患者の発生は西日本に多いですが最近では年間数例という状況のまれな感染症です。
日本脳炎は蚊によって伝染するウイルス感染症で、ウイルスが脳に直接侵入することで発熱・嘔吐・意識障害を来し、死亡率が20~30%に達する恐ろしい病気でもあります。
いったんかかると対症療法で改善するのを待つしかありませんので、予防が非常に重要な病気です。
予防は、まずワクチンを接種すること、ウイルスを媒介する蚊に刺されないようにすることとなります。 
日本脳炎の予防はワクチン接種が重要な位置を占めています。
1960年代までは1,000人を超える感染者がありました。1976年にワクチンが開発されて以降、患者数は激減し1995年に小児に定期接種化されたことで感染を封じ込めている状況です。

 しかし、 今回の長崎県での感染者はいずれも70~80代の成人です。
定期接種としてワクチンが広く接種されるようになってまだ20年程度しか経過していませんが、高齢者には接種の機会がほとんどないため、免疫を持っていない成人はかなりの割合になります。
今回の長崎県対馬での日本脳炎の発生は幸いにも皆さん軽快されているようですが、ワクチン接種を行っていればたとえ感染しても発症しなかったかもしれません。
そういう意味ではワクチン接種の必要性をもっと啓蒙していく必要があるでしょう。 

 さて、このように日本脳炎の感染予防に大きな意味を持っている日本脳炎ワクチンですが、その製造メーカーが熊本市にある「化血研」です。
化血研は日本脳炎以外の疾患のワクチン(A,B型肝炎、季節性インフルエンザ、四種混合など)や血液製剤も取り扱っている会社です。 
報道でご存じの方も多いとは思いますが、2015年6月に厚労省に認可をうけている方法とはことなる製法で血液製剤やワクチンを製造していたとして、行政処分やワクチンの出荷停止が生じました。
とくにワクチンは化血研が大きなシェアを占めていたものも多く、混乱を生じました。
このため医療関係者やマスメディアから厳しい批判に晒されたのは記憶に新しいところです。
さらに今年の熊本地震で製造ラインが被災し、製造が中止されたままのワクチンがあり、いまだに混乱が収まっていません。
(今年度のインフルエンザワクチンも化血研は製造していますが、他メーカーと合わせてもワクチン製造量が少なく、需要は満たして入るもののシリンジタイプの製造中止など、大きな影響が出ています。
また、幸いにも認可外製造をしていたワクチンや血液製剤の検定に合格しており、安全性・有効性は保たれているとのことです。)

 この混乱が収集していない中、10/4化血研が製造する日本脳炎ワクチン「エンセバック」で、認可外製造が明らかになったという報道がありました。
厚労省は行政処分を検討しているとのことです。 

 これによって業務停止などが生じるのでしょうか?
ワクチンの出荷停止は日本脳炎ワクチンのみならず、10/1に定期接種化されたB型肝炎ワクチンにも及ぶとしたら混乱は避けられないでしょう。
もしワクチン供給量が不足するとなれば、なんの罪もない子どもたちを感染の危険に晒さないためにも、定期接種を逃してしまった子供にもワクチン接種ができるようにするなど、行政には柔軟な対応を検討していただきたいと思います。

 化血研に対しては厚労省は業務譲渡を勧告していますが、化血研が拒否しているとの報道もあります。
国民の生命を守る役割があるメーカーとして責任ある対応をしていただきたいものです。