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コロナウイルス検査について思うこと(検査希望者の全数検査は行うべきか?)

今回の記事は、新型コロナウイルスPCR検査について小さな内科診療所の医者が思うことを書いたものです。
コロナウイルスの最新のトピックスなどはありませんので最初にお断りしておきます。
(2020年3月11日 記事の表現を一部修正し、まとめを追加しました。)
まとめ
この記事を要約すると以下のようになります。
・新型コロナウイルス感染が広がってきており、PCR検査が行われるようになっている。
・「検査が広く行われないのはおかしい」といった、全例検査を主張する報道が見受けられる。
・臨床検査では「感度・特異度」を用いてその検査精度を評価されることが一般的で、感度が高い検査は除外診断に、特異度が高い検査は確定診断に有用である
・新型コロナウイルスに対するPCR検査は特異度は高いが、感度はそれほど高くない。よって、症状がある人に対しての確定診断に有用と考えられるが、症状がない人の除外診断には向かない。よって、接触歴や症状がある人を対象にPCR検査を行う基準は概ね妥当と考えられる。
・もし、PCR検査を対象を制限せずに検査希望者全員に行ってしまうと、医療現場は混乱し外来機能が低下してしまうことになり医療崩壊につながる可能性もある。正しい知識を身に着けて検査を行うべきである。
・新型コロナウイルス感染症に対して確立した治療はまだない。予防としては「手洗い」・「咳エチケット」・「人混みを避ける」・「発熱や風邪症状のときは自宅に待機する」・「毎日体温測定を行い体調管理を行う」といったことが挙げられる。
困ったドクター
日本に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がもたらされてから2ヶ月も経過していませんが、このところ急速に拡がりを見せており、収束の気配がありません。診断にはSARS-CoV-2に対するPCR検査が用いられています。今のところSARS-CoV-2の臨床診断を行うにはPCR検査しか方法がありません。このPCR検査をめぐって、テレビや雑誌といったマスメディアで「なぜ、希望者全員に検査させないのか!」といった感じで、いい加減な知識で発言を行う人が多いのが気がかりです。
テレビのタレントのコメンテーターが言う事ならまだ知識不足からくるもので仕方がないと思いますが、大学のセンセイの肩書を持つ人までいい加減なことを言っています。情報の受け手としては間違った情報を見分けて、それに騙されないように気をつけないといけません。

臨床検査の感度と特異度について

臨床検査を行うにあたって、感度と特異度の話を避けて通れません。どんな病気の診断を行う検査でも、100%の精度の検査は存在せず、一定の確率で間違った判断結果となることがあります。それを理解した上で、検査結果を評価しないといけません。ここで問題となるのが感度と特異度です。
Wikipediaによると感度・特異度は以下のように解説されています。
感度: ”医学における感度とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」として定義される値である。感度が高い(高感度である)、とは、「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する可能性が高い」、あるいは「陽性と判定されるべきものを間違って陰性と判定する可能性が低い」という意味である。"
https://ja.wikipedia.org/wiki/感度#医学における感度

特異度: "特異度(とくいど)とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。特異度が高い、とは、「陰性のものを正しく陰性と判定する可能性が高い」、あるいは「陰性のものを間違って陽性と判定する可能性が低い」という意味である。 "
"なお、検査に限らず、「Bという症状は、Aという疾患に特異的だ(特異度が高い)」という言い方をすることが可能である。この場合の意味は、「Bという症状があれば、Aという病気がないのに誤ってAであると診断してしまう可能性が低い」という意味、すなわち「Bという症状があればAを強く疑ってよい」という意味で使われることが多く、逆に言えば「Bという症状がないからAという病気はない可能性が高い」と言っているわけではない。厳密にはこのような文脈で言う特異度とは陽性予測度であり、こういう文脈で使われる特異性・特異度は、検査における特異度の概念とは異なっている。 一般的には、感度が高いと除外診断(rule out)に有用であり、特異度が高いと確定診断に有用である。"
https://ja.wikipedia.org/wiki/特異度
この最後の「感度が高いと除外診断(rule out)に有用であり、特異度が高いと確定診断に有用である」が大事です。
では一番身近な迅速検査であるインフルエンザについて考えてみましょう。
ある報告ではインフルエンザ迅速キットの感度・特異度はそれぞれ62.3%,98.2%と言われています。つまり、感度はまあまあですが、特異度が非常に高い検査と言えます。よって、除外診断にはあまり向かず、確定診断に有用な検査となります。(乱暴な言い方をすればインフルエンザキットで陽性ならほぼ間違いなくインフルエンザと言えるが、陰性でもインフルエンザでないとは言い切れない、と言う結論。)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR検査を感度・特異度から考えると?(全数検査を行ってはいけない理由)

SARS-CoV-2のPCR検査の感度・特異度はまだ十分にわかっていないところが多いですが、
感度:30-40%(高くても70%ほど)
特異度:90%
であるようです。

これをもとに考えると、感度は低く、特異度が高い検査と言えます。つまり、除外診断には向かず、確定診断に有用な検査となります。
よって、発熱・呼吸器症状といった臨床症状がある人(事前確率が高い人)のSARS-CoV-2の確定診断には有用であるが、単に接触しただけで症状がない人の除外診断には向かないと言えます。

なお、現在の「帰国者・接触者外来の受診の目安」(PCR検査を行う目安とも言えるでしょう)は、以下のとおりです。

(1)発熱または呼吸器症状があり、新型コロナウイルス感染症確定患者と濃厚接触歴がある 。
(2)37.5℃以上の発熱と呼吸器症状があり、発症14日以内に新型コロナウイルス流行地域に居住していた。
(3)37.5℃以上の発熱と呼吸器症状があり、「発症14日以内に新型コロナウイルス流行地域に渡航または居住していたもの」と濃厚接触がある。
(4)風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
(5)強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。

つまり現在の検査の対象者は臨床症状がある事前確率の高い人となっています。
すでに記したとおり、SARS-CoV-2のPCR検査は感度が低く特異度が比較的高い検査であり、確定診断に有用と考えられますので、現在の臨床症状で検査を対象とするかどうかを決めていること(確定診断に目的に検査を行うこと)は理にかなっていると考えます。
(この臨床診断の基準が適切かどうかは別ですが・・・)

もし、PCR検査を対象を制限せずに検査希望者全員に行ってしまうと、医療現場は混乱し外来機能が低下してしまうことになり医療崩壊につながる可能性もあります。正しい知識を身に着けて検査を行うべきです。
(どこかの国のようにドライブスルーのように希望者全員を検査することなんて・・・とんでもない!!正しい知識があればそのような判断にはなりません。)

なお、PCR検査は保険適応になりましたが、その検査の実施は厳格な院内感染防止策が行える医療機関に限られるため、当院を含め多くの診療所・病院は対応できません
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しての治療は確立されていない以上、現在の私達にできることは予防しかありません。

1.手洗いの徹底:外出先から帰宅した際や食事の前には石鹸での手洗いやアルコールの手指消毒を行う
2.咳エチケット:咳が出る場合はマスクを着用する
3.人混みを避ける
4.発熱や風邪症状があるときは学校・会社を休む
5.風邪の症状があれば毎日体温測定を行う

しばらくはウイルスとの持久戦が続きますが、ひとりひとりの力でこの危機を乗り切りたいものです。
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