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~時間栄養学を生活に活かそう~ (3)脂肪燃焼に効果的な運動の時間帯はいつ?

2019/12/18

時間運動学とは?

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これまで時間栄養学の内容を記してきましたが、最近では時間運動学という考え方もあります。運動を行うことも体内時計に影響を及ぼします。運動を一日の中でいつ運動を行うのが効果的か、生理的にどのような影響を及ぼすのかを考えるのが時間運動学です。

運動を行うのは食前がいいのか、食後がいいのか?

運動を行うタイミングで、食事の前後でどちらが効果的かを調べた研究成果は数多くあります。食事の前後でどちらが効果的に脂肪を燃焼させる運動として効果が高いかは、まだ一定の結論が出ていないようです。ヒトの研究では食前の運動が脂肪の酸化を促し、食後の血中の中性脂肪の値を低下させるという報告があります。一方、食後の運動は安静時のエネルギー代謝を上昇させ、体重増加が抑えられると考えられます。まだまだエビデンスが少ないですが、どちらかというと食前よりも食後の運動のほうが脂肪燃焼に効果的とする考え方が主流のようです。

脂肪燃焼に効果的な運動を運動を行うのに効果的な時間帯はいつ?

 一日の中で最も効果的に脂肪を燃焼させる時間帯はあるのでしょうか?あるとすれば朝でしょうか?夕でしょうか?
 
 マウスに輪回しをさせて運動をさせた実験では、運動をさせない群にくらべ運動をさせた群では、食事による糖の吸収が増加します。さらに運動をさせた群で朝運動をさせた群と夕に運動をさせた群で比較すると、夕に運動をさせた群の方が体重増加が有意に低いという結果でした。このことから、ダイエットを目的に運動をおこなうとすれば、朝よりも夕方に運動を行うことが効果的と考えられます。例えば「電車通勤のビジネスマンが運動不足解消のため、脂肪燃焼を目的に運動をする」としたら、夕方に一駅手前で電車から降りて、残りの距離を速歩きで帰宅すると効果的でしょう。
参考文献 

Sasaki H, Ohtsu T, Ikeda Y, Tsubosaka M, Shibata S: Combination of meal and exercise timing with a high-fat diet influences energy expenditure and obesity in mice.Chronobiol Int. 2014 Nov;31(9):959-75. doi: 10.3109/07420528.2014.935785.

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~時間栄養学を生活に活かそう~ (2)朝ごはんを抜かすとメタボがすすむ!

2019/12/18
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今回は前回の記事で記した親子の時計と深い関係がある朝ごはんについて記していきます。

親子の時計と朝ごはんの深い関係

  前回のブログでは体内にある親子の時計について記しました。体内時計は親時計からホルモンや神経伝達物質や食事の刺激などを介して、子時計に時間情報を伝えることでうまく制御されています。「食事の刺激」のうち、なかでも朝食が体内時計に大きな影響を及ぼしていることがわかってきました。さまざまな研究の中で、日本の大学生を対象にした2013年の研究内容が興味深いのでご紹介します。
 普段あまり朝食を取る習慣がない大学生を集めてきて研究した内容です。そのまま朝食を食べない状態の群と朝食を食べるようにした群の2群にわけ、2週間で心電図と血液検査で解析を行っています。心電図からは交感神経・副交感神経の活動の程度がわかります。朝食をとった群はとらなかった群と比較して、交感神経や副交感神経の日内変動のピークとなる時間が2時間程度早まることがわかりました。さらに、朝食をとった群はとらない群よりもコレステロール値(総コレステロール・LDLコレステロール)が有意に低かったことがわかりました。つまり、朝食をとることで、午前中から交感神経が活発になり、メタボリックシンドロームの原因となる悪玉コレステロールを減らせることが判明しました。逆に朝食を取らないと朝から体がシャキっと動くことができず、メタボの原因を作ってしまうことになります。
参考文献 
Yoshizaki T, Tada Y, Hida A, Sunami A, Yokoyama Y, Yasuda J, Nakai A, Togo F, Kawano Y. :Effects of feeding schedule changes on the circadian phase of the cardiac autonomic nervous system and serum lipid levels.Eur J Appl Physiol. 2013 Oct;113(10):2603-11. doi: 10.1007/s00421-013-2702-z. Epub 2013 Aug 7.

一日のリズムを作るためのに効果的な朝食の内容は?

 動物実験の結果から、体内時計をうまく調節させるには肝臓や膵臓にある子時計が関係していることがわかっています。食事により膵臓から分泌されるインスリンが多くなると、サイトカインを介して肝臓の時間遺伝子の発現が増えます。つまりインスリンを出やすくする朝食が、体内時計を動かすと言えます。具体的にはGI値が高い(=食後の血糖をあげやすい)食材である、白米やパン、うどんといった炭水化物を朝食でとると、体内時計を前進させやすくなり、ダイエットに効果的となります。
 一般的にGI値が高い食材がダイエットには不向きと考えられていますので、この内容は意外に思われるかもしれませんが、体内リズムを整え代謝を活発にするという観点からは、炭水化物を朝食でとることは重要と言えます(もちろんとりすぎはいけませんが・・・)。
また、DHAやEPAといった魚の油もインスリン機能を高めます。このことから、一日を健康に過ごす理想の朝食の組み合わせは、「ご飯と焼き魚」が一番と言えるかもしれません。

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~時間栄養学を生活に活かそう~ (1)体内時計とは?

2019/12/18
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 皆さんは「体内時計」という言葉はご存知でしょう。海外旅行に行くと時差ボケになり、眠気やだるさを感じることがあると思います。これは体内時計のリズムが狂ってしまうからです。1997年頃時計遺伝子が発見され約20年経過しました。ここから時間と体の仕組みの研究が進み、その中でも時間栄養学は栄養学の新しい分野として確立しました。

 今回から数回にわたり時間栄養学をご紹介していきたいと思います。時間と栄養の関係を知ることで、健康に過ごしていただくヒントになれば幸いです。

体内にある「親子」の時計

「時計を見なくてもお昼ごはんの前には決まってお腹がすくので、時間がだいたい分かる」ということはよく経験します。これがいわゆる腹時計です。最近の研究では腹時計以外にも体の各臓器に「時計」があることがわかってきました。そして各臓器にある時計は脳内にあるおおもとの時計によって制御されていることがわかっています。この脳内の時計が「親時計(中枢時計)」で、各臓器にある時計が「子時計(末梢時計)」と言われます。

 それぞれの臓器にある子時計は胃腸・肝臓・心臓・腎臓・筋肉など、あらゆる組織に存在しています。そして一日の中でもリズム(日内変動)をもっています。たとえば肝臓では糖や脂肪の合成・分解やエネルギー代謝に日内変動が見られます。そしてこれらの子時計は、脳の視床下部にあるSCN:suprachiasmatic nucleus という部位にある親時計によって制御されています。親時計は、外界からの光刺激を目の網膜を通して受け入れます。親時計は親時計からホルモンや神経伝達物質や食事の刺激などを介して、子時計に時間情報を伝えています。この親時計からの刺激をうけて、体の各所の子時計に作用して睡眠と覚醒・エネルギー代謝などに日内リズムをもたらすことがわかっています。そしてこの約24時間の日内変動をもたらしてくれるのは、各臓器の細胞に存在する時計遺伝子です。この時計遺伝子がなくなると日内変動が消失してしまうことがわかっています。

親子の時計(体内時計)のことを知れば健康に過ごせる!

 これまで病気に対し、食事や運動・お薬の治療で対応しています。今後もこれが変わることはありません。しかし、時間という概念を加えることで、さらに健康増進が期待できます。これが時間栄養学・時間運動学といった考え方です。今後数回に渡っていくつかの項目を取り上げていこうと思います。

便秘に効く食事療法とは?

2019/12/27
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  便秘は高齢者のみならず働き盛りの世代にも悩んでいる方が多いポピュラーな病気です。
当院の消化器内科にも多くの便秘の患者様が来院されます
今回は便秘を解消するための食事について考えます。
(便秘の中でも高齢者に多い弛緩性便秘の食事療法を取り上げます。)

排便のメカニズム

便の中には体内で不要になった老廃物や、有害物質が含まれています。
ですから、便秘が生じるとこれらの体内の不要なものが蓄積される事になり、体調不良の原因となります。
では、便はどのようにつくられるのでしょうか?

 胃から小腸までで消化吸収された食べ物の残りカスは、水分が多くどろどろしています。
小腸から大腸に入ってきた内容物は約7割が水分で、残りが食物残渣や腸粘膜上皮や腸内細菌からなります。大腸まで内容物が到達すると、リズムよく徐々に肛門に向かってを送り出す運動が起こります。これを蠕動運動といいます。その過程で大腸の粘膜から水分が吸収されて内容物は固形化していきます。この過程で大腸の粘膜を傷つけないように粘液の分泌が起こります。
 このよううに、大腸でスムーズに便を作るためには蠕動運動粘液の分泌が充分に行われる必要があります。
この蠕動運動と粘液の分泌が充分でないと便秘の原因となります。

便秘を予防する食事(栄養素)とは?

  大腸の蠕動運動と粘液の分泌をしっかり行うためには、腸内細菌のバランスを整える必要があります。
腸内細菌は約1000種類の細菌がいると考えられています。偏った食生活をしていると、特定の腸内細菌だけが増殖してしまい、腸内細菌のバランスが崩れてしまいます。すると蠕動運動の低下や充分に粘液の分泌が行われなくなり、便秘となります。便秘を改善するには腸内細菌のバランスを保つことが重要で、野菜・肉・魚・海藻類・発酵食品などをバランスよく取ることが必要です。

1.食物繊維

 食物繊維とは、「ヒトの消化酵素によって消化されない食物に含まれている難消化成分」の総称で、セルロース・ペクチン・キトサン・グアガム・グルコマンナンなどがあります。現在の日本では野菜の摂取が少なくなり、食事の欧米化が進んでいる現状があります。日本人が1日に摂取している食物繊維の量はだいたい15g程度で、快適な排便に必要な20gには達しておらず、多くの方が不足しているのが現状です。
 食物繊維は2種類あり、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」に分けられます。

 不溶性食物繊維ニンジン・ゴボウなどの根菜類や玄米・麦などの穀類、さつまいもなどのイモ類、大豆・小豆などの豆類に多く含まれます。食感はボソボソしたものが多く、自然とよく噛んで食べる食材です。胃や腸に入ると水分を含み大きく膨らむため、大腸まで運ばれると蠕動運動を促し排便につながります

 水溶性食物繊維昆布やわかめといった海藻類やキャベツ・大根などの野菜類、大豆や大麦・ライ麦等の麦類に多く含まれます。食感はネバネバしたものとサラサラしたものがあります。水分保持能力が強く、便をドロドロと粘りのある状態にします。腸内細菌によって分解され短鎖脂肪酸をつくる原料となります。短鎖脂肪酸は悪玉菌の増殖を抑え、腸内細菌叢を改善する働きがあります。

2.水

  厳密には水は栄養素とは言えないかもしれません。しかし食物繊維をいかに多く摂っていても飲む水分量が少なければ便は硬いままです。便秘の方には一日2リットル程度の飲水をおすすめします(ただし、心不全などの病気がある方は病気の悪化の可能性がありますので、主治医と相談が必要です)。お茶はカフェインの作用で利尿が促進されますのであまりよくありません。朝食後に冷たい水や牛乳・豆乳を飲むのが一番です。

3.油

  油を適度に摂ることも重要です。特に植物性油脂に多く含まれるリノール酸、リノレン酸、オレイン酸といった不飽和脂肪酸は、大腸での便の滑りを良くし、蠕動運動を促す作用があります。なかでもオリーブオイルは効果が期待できます。またスリゴマは食物繊維も同時に摂れるので良いでしょう。
  便秘にお悩みの方は、ぜひ食事を見直すことから始めていただきたいと思います。しっかりとした排便にするためには朝食を食べ、腸に刺激を与えることも大事です。余裕を持って起床し、しっかり朝食をとっていきましょう
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