神戸市垂水区|かわクリニック|内科・消化器内科

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~時間栄養学を生活に活かそう~ (1)体内時計とは?

2019/12/18
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 皆さんは「体内時計」という言葉はご存知でしょう。海外旅行に行くと時差ボケになり、眠気やだるさを感じることがあると思います。これは体内時計のリズムが狂ってしまうからです。1997年頃時計遺伝子が発見され約20年経過しました。ここから時間と体の仕組みの研究が進み、その中でも時間栄養学は栄養学の新しい分野として確立しました。

 今回から数回にわたり時間栄養学をご紹介していきたいと思います。時間と栄養の関係を知ることで、健康に過ごしていただくヒントになれば幸いです。

体内にある「親子」の時計

「時計を見なくてもお昼ごはんの前には決まってお腹がすくので、時間がだいたい分かる」ということはよく経験します。これがいわゆる腹時計です。最近の研究では腹時計以外にも体の各臓器に「時計」があることがわかってきました。そして各臓器にある時計は脳内にあるおおもとの時計によって制御されていることがわかっています。この脳内の時計が「親時計(中枢時計)」で、各臓器にある時計が「子時計(末梢時計)」と言われます。

 それぞれの臓器にある子時計は胃腸・肝臓・心臓・腎臓・筋肉など、あらゆる組織に存在しています。そして一日の中でもリズム(日内変動)をもっています。たとえば肝臓では糖や脂肪の合成・分解やエネルギー代謝に日内変動が見られます。そしてこれらの子時計は、脳の視床下部にあるSCN:suprachiasmatic nucleus という部位にある親時計によって制御されています。親時計は、外界からの光刺激を目の網膜を通して受け入れます。親時計は親時計からホルモンや神経伝達物質や食事の刺激などを介して、子時計に時間情報を伝えています。この親時計からの刺激をうけて、体の各所の子時計に作用して睡眠と覚醒・エネルギー代謝などに日内リズムをもたらすことがわかっています。そしてこの約24時間の日内変動をもたらしてくれるのは、各臓器の細胞に存在する時計遺伝子です。この時計遺伝子がなくなると日内変動が消失してしまうことがわかっています。

親子の時計(体内時計)のことを知れば健康に過ごせる!

 これまで病気に対し、食事や運動・お薬の治療で対応しています。今後もこれが変わることはありません。しかし、時間という概念を加えることで、さらに健康増進が期待できます。これが時間栄養学・時間運動学といった考え方です。今後数回に渡っていくつかの項目を取り上げていこうと思います。

便秘に効く食事療法とは?

2019/12/27
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  便秘は高齢者のみならず働き盛りの世代にも悩んでいる方が多いポピュラーな病気です。
当院の消化器内科にも多くの便秘の患者様が来院されます
今回は便秘を解消するための食事について考えます。
(便秘の中でも高齢者に多い弛緩性便秘の食事療法を取り上げます。)

排便のメカニズム

便の中には体内で不要になった老廃物や、有害物質が含まれています。
ですから、便秘が生じるとこれらの体内の不要なものが蓄積される事になり、体調不良の原因となります。
では、便はどのようにつくられるのでしょうか?

 胃から小腸までで消化吸収された食べ物の残りカスは、水分が多くどろどろしています。
小腸から大腸に入ってきた内容物は約7割が水分で、残りが食物残渣や腸粘膜上皮や腸内細菌からなります。大腸まで内容物が到達すると、リズムよく徐々に肛門に向かってを送り出す運動が起こります。これを蠕動運動といいます。その過程で大腸の粘膜から水分が吸収されて内容物は固形化していきます。この過程で大腸の粘膜を傷つけないように粘液の分泌が起こります。
 このよううに、大腸でスムーズに便を作るためには蠕動運動粘液の分泌が充分に行われる必要があります。
この蠕動運動と粘液の分泌が充分でないと便秘の原因となります。

便秘を予防する食事(栄養素)とは?

  大腸の蠕動運動と粘液の分泌をしっかり行うためには、腸内細菌のバランスを整える必要があります。
腸内細菌は約1000種類の細菌がいると考えられています。偏った食生活をしていると、特定の腸内細菌だけが増殖してしまい、腸内細菌のバランスが崩れてしまいます。すると蠕動運動の低下や充分に粘液の分泌が行われなくなり、便秘となります。便秘を改善するには腸内細菌のバランスを保つことが重要で、野菜・肉・魚・海藻類・発酵食品などをバランスよく取ることが必要です。

1.食物繊維

 食物繊維とは、「ヒトの消化酵素によって消化されない食物に含まれている難消化成分」の総称で、セルロース・ペクチン・キトサン・グアガム・グルコマンナンなどがあります。現在の日本では野菜の摂取が少なくなり、食事の欧米化が進んでいる現状があります。日本人が1日に摂取している食物繊維の量はだいたい15g程度で、快適な排便に必要な20gには達しておらず、多くの方が不足しているのが現状です。
 食物繊維は2種類あり、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」に分けられます。

 不溶性食物繊維ニンジン・ゴボウなどの根菜類や玄米・麦などの穀類、さつまいもなどのイモ類、大豆・小豆などの豆類に多く含まれます。食感はボソボソしたものが多く、自然とよく噛んで食べる食材です。胃や腸に入ると水分を含み大きく膨らむため、大腸まで運ばれると蠕動運動を促し排便につながります

 水溶性食物繊維昆布やわかめといった海藻類やキャベツ・大根などの野菜類、大豆や大麦・ライ麦等の麦類に多く含まれます。食感はネバネバしたものとサラサラしたものがあります。水分保持能力が強く、便をドロドロと粘りのある状態にします。腸内細菌によって分解され短鎖脂肪酸をつくる原料となります。短鎖脂肪酸は悪玉菌の増殖を抑え、腸内細菌叢を改善する働きがあります。

2.水

  厳密には水は栄養素とは言えないかもしれません。しかし食物繊維をいかに多く摂っていても飲む水分量が少なければ便は硬いままです。便秘の方には一日2リットル程度の飲水をおすすめします(ただし、心不全などの病気がある方は病気の悪化の可能性がありますので、主治医と相談が必要です)。お茶はカフェインの作用で利尿が促進されますのであまりよくありません。朝食後に冷たい水や牛乳・豆乳を飲むのが一番です。

3.油

  油を適度に摂ることも重要です。特に植物性油脂に多く含まれるリノール酸、リノレン酸、オレイン酸といった不飽和脂肪酸は、大腸での便の滑りを良くし、蠕動運動を促す作用があります。なかでもオリーブオイルは効果が期待できます。またスリゴマは食物繊維も同時に摂れるので良いでしょう。
  便秘にお悩みの方は、ぜひ食事を見直すことから始めていただきたいと思います。しっかりとした排便にするためには朝食を食べ、腸に刺激を与えることも大事です。余裕を持って起床し、しっかり朝食をとっていきましょう
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