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インフルエンザ予防になる栄養素とは?

2020/12/31
  年末になり気温が下がり、寒さが体に堪える季節になってきました。寒い時期に流行するインフルエンザですが、マスコミの報道にもあるように今年は流行が例年より早いようです。当院でもすでに多くのインフルエンザ患者さんを診療しています。インフルエンザの説明項目にも記してますが、感染予防対策はまずはインフルエンザワクチンの予防接種と流行時期には手洗いや部屋の加湿の徹底などがありますが、栄養管理も重要となります。先月、養命酒にも含まれる「クロモジエキス」がインフルエンザ感染患者の抑制ならびに風邪症状の有症期間を有意に短縮した(愛媛大学プレスリリース)との報告がありました。今回はインフルエンザにかかりにくくするための栄養療法について考えてみます。

ビタミンDのインフルエンザに対する予防効果

インフルエンザの感染予防に最も効果があることが判明している栄養素はビタミンDです。ビタミンDは骨を作る栄養素として知られていますが、それ以外にも免疫作用がありインフルエンザ予防効果があることがわかっています。
2010年東京慈恵会医科大学浦島光佳先生発表の日本の子供を対象とした研究論文では、ビタミンD3が1,200単位入ったカプセルを摂取させると、摂取しないグループよりもインフルエンザの発症が42%低い結果が出ています。
参考文献
Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren.
Urashima M1, Segawa T, Okazaki M, Kurihara M, Wada Y, Ida H. Am J Clin Nutr. 2010 May;91(5):1255-60. doi: 10.3945/ajcn.2009.29094. Epub 2010 Mar 10.

また、2009年のアフリカ系アメリカ人208人を対象にした論文では、ビタミンD3 800単位を2年間摂取したあとに、1年間に1,000単位のビタミンD3の服用した群とプレセボを服用した群の比較研究では、観察期間3年間でカゼやインフルエンザ症状を生じた人数を比較するとビタミンD3服用群では8名で、プラセボ服用群では26名でした。ビタミンD濃度が低いとインフルエンザに感染しやすいことが示唆されます。
参考文献
A randomized controlled trial of vitamin D3 supplementation for the prevention of symptomatic upper respiratory tract infections.
Li-Ng M1, Aloia JF, Pollack S, Cunha BA, Mikhail M, Yeh J, Berbari N. Epidemiol Infect. 2009 Oct;137(10):1396-404. doi: 10.1017/S0950268809002404. Epub 2009 Mar 19.

ビタミンDは日光が皮膚に当たることで体内で合成されます。他に食事から摂取することで得られます。食品としてはサケやイクラ・イワシといった魚介や、キクラゲなどのきのこ類に多く含まれます。日本人の1日に必要とされるビタミンDの摂取量は5.5μgでほとんどの日本人は摂取量を満たしているといえますが、魚をあまり食べない人は不足している可能性があります特に日照時間が少ない冬場は皮膚からの合成が少なく、ビタミンDが不足している可能性があります。脂溶性ビタミンであるため過剰摂取には注意が必要であるものの、サプリメントを使い補充することを考えてもいいでしょう。
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カテキンのインフルエンザに対する予防効果

緑茶にはポリフェノールの一種であるカテキンが多く含まれます。2009年シーズンに医療従事者にカテキンとテアニンを含むカプセルを摂取させてインフルエンザの発症者数をみた研究ではカテキン・テアニンの服用群でインフルエンザの発症が少ないという結果でした。このことから緑茶を飲むとインフルエンザの予防ができるかもしれません。(緑茶にはカフェインを含みますので、子供や高齢者などは飲む量や時間に注意が必要でしょう。)

ビタミンAやビタミンCのインフルエンザに対する予防効果

ビタミンAやビタミンCにもインフルエンザの予防効果があると考えられていますが、ビタミンDやカテキンほどには十分に予防の根拠はないようです。ビタミンAは粘膜を正常に維持するのに必要な栄養素で、不足すると夜盲症の原因になります。のどや鼻の粘膜のウイルスに対するバリや機能を維持するためにも不足しないようにする必要があります。ビタミンAはうなぎや鳥や豚のレバーなどに多く含まれます

ビタミンCは大量摂取で免疫を活性化することが示唆されていますが、日常的な摂取で効果があるという根拠はあまりありません。

インフルエンザ予防の食事メニューは?

インフルエンザ予防に一番効果があると考えられる栄養素はビタミンDです。ビタミンDを多く含む食材をうまく取り入れることで効果が期待できそうです。例えば夕食にサケのムニエルやイワシの焼き物とキクラゲの中華サラダといった感じでしょうか。ビタミンAの補充にはうなぎの蒲焼もいいかもしれません。(ウナギの旬は夏ではなく冬です。)

コーヒーの飲みすぎは胸焼けを悪化させる!! 〜海外論文の紹介〜

2019/12/21
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ここ数年で、寝ている間の胸焼けや胸のつかえた感じといった症状で受診される方が増えています。こういう症状の方は胃食道逆流症(逆流性食道炎)があるかもしれません。文字通り胃酸が胃から食道に逆流することで生じるのですが、内視鏡検査を行った上で胃食道逆流症があれば、制酸剤が処方されます。胃食道逆流症を悪化させる因子の一つに食事との関連があります。なかでも胃酸を増やすカフェインが多く含まれたコーヒや紅茶の過飲や、炭酸飲料による胃の拡張が増悪させる一因と考えられていますが、それらをはっきりと証明した論文はあまりありません。
 今回、飲み物の種類別に胃食道逆流症を生じるリスクをしらべた海外論文が公開されましたので、内容をご紹介します。

各飲み物と胃食道逆流症の症状の関係

 対象は症例登録時に(1)胃食道逆流症の症状がない(2)がんがない(3)胃酸を抑える薬剤が使用されていない48,308人の女性の看護師(42歳から62歳)です。観察期間中に7961人が胃食道逆流症の症状を認めています。

 まず普段飲んでいる飲み物と胃食道逆流症の症状との関連を調べています。それぞれの飲み物を(A)1日6杯以上飲むグループと(B)全く飲まないグループで分けると、症状の発症のリスクは(B)と比較して(A)のそれは以下のようでした。
コーヒー:(A)で(B)より34%増加
紅茶:(A)で(B)より26%増加
炭酸飲料:(A)で(B)より29%増加

 また、水や牛乳、柑橘類のジュースは症状の発症リスクは認められませんでした

 さらに、コーヒーや紅茶・炭酸飲料の2杯分を水2杯に置き換えると、それぞれ症状の発生が少なくなりました
文献
Clin Gastroenterol Hepatol. 2019 Nov 28. pii: S1542-3565(19)31380-1. doi: 10.1016/j.cgh.2019.11.040. [Epub ahead of print]
Association Between Beverage Intake and Incidence of Gastroesophageal Reflux Symptoms: Beverages and GER symptoms.
Mehta RS, Song M, Staller K, Chan AT.

まとめ

まとめると、コーヒーや紅茶・炭酸飲料の飲みすぎは胃食道逆流症を悪化させるという結果です。ただ胃食道逆流症を悪化させる要因は飲み物の過飲以外にもタバコやアルコールも関係しています。ふだんから症状がある人はタバコやアルコールを控えることも重要でしょう。そのうえで、コーヒーは1日2〜3杯程度にとどめておくと胃食道逆流症を起こしにくいといえるでしょう。

~時間栄養学を生活に活かそう~ (3)脂肪燃焼に効果的な運動の時間帯はいつ?

2019/12/18

時間運動学とは?

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これまで時間栄養学の内容を記してきましたが、最近では時間運動学という考え方もあります。運動を行うことも体内時計に影響を及ぼします。運動を一日の中でいつ運動を行うのが効果的か、生理的にどのような影響を及ぼすのかを考えるのが時間運動学です。

運動を行うのは食前がいいのか、食後がいいのか?

運動を行うタイミングで、食事の前後でどちらが効果的かを調べた研究成果は数多くあります。食事の前後でどちらが効果的に脂肪を燃焼させる運動として効果が高いかは、まだ一定の結論が出ていないようです。ヒトの研究では食前の運動が脂肪の酸化を促し、食後の血中の中性脂肪の値を低下させるという報告があります。一方、食後の運動は安静時のエネルギー代謝を上昇させ、体重増加が抑えられると考えられます。まだまだエビデンスが少ないですが、どちらかというと食前よりも食後の運動のほうが脂肪燃焼に効果的とする考え方が主流のようです。

脂肪燃焼に効果的な運動を運動を行うのに効果的な時間帯はいつ?

 一日の中で最も効果的に脂肪を燃焼させる時間帯はあるのでしょうか?あるとすれば朝でしょうか?夕でしょうか?
 
 マウスに輪回しをさせて運動をさせた実験では、運動をさせない群にくらべ運動をさせた群では、食事による糖の吸収が増加します。さらに運動をさせた群で朝運動をさせた群と夕に運動をさせた群で比較すると、夕に運動をさせた群の方が体重増加が有意に低いという結果でした。このことから、ダイエットを目的に運動をおこなうとすれば、朝よりも夕方に運動を行うことが効果的と考えられます。例えば「電車通勤のビジネスマンが運動不足解消のため、脂肪燃焼を目的に運動をする」としたら、夕方に一駅手前で電車から降りて、残りの距離を速歩きで帰宅すると効果的でしょう。
参考文献 

Sasaki H, Ohtsu T, Ikeda Y, Tsubosaka M, Shibata S: Combination of meal and exercise timing with a high-fat diet influences energy expenditure and obesity in mice.Chronobiol Int. 2014 Nov;31(9):959-75. doi: 10.3109/07420528.2014.935785.

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~時間栄養学を生活に活かそう~ (2)朝ごはんを抜かすとメタボがすすむ!

2019/12/18
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今回は前回の記事で記した親子の時計と深い関係がある朝ごはんについて記していきます。

親子の時計と朝ごはんの深い関係

  前回のブログでは体内にある親子の時計について記しました。体内時計は親時計からホルモンや神経伝達物質や食事の刺激などを介して、子時計に時間情報を伝えることでうまく制御されています。「食事の刺激」のうち、なかでも朝食が体内時計に大きな影響を及ぼしていることがわかってきました。さまざまな研究の中で、日本の大学生を対象にした2013年の研究内容が興味深いのでご紹介します。
 普段あまり朝食を取る習慣がない大学生を集めてきて研究した内容です。そのまま朝食を食べない状態の群と朝食を食べるようにした群の2群にわけ、2週間で心電図と血液検査で解析を行っています。心電図からは交感神経・副交感神経の活動の程度がわかります。朝食をとった群はとらなかった群と比較して、交感神経や副交感神経の日内変動のピークとなる時間が2時間程度早まることがわかりました。さらに、朝食をとった群はとらない群よりもコレステロール値(総コレステロール・LDLコレステロール)が有意に低かったことがわかりました。つまり、朝食をとることで、午前中から交感神経が活発になり、メタボリックシンドロームの原因となる悪玉コレステロールを減らせることが判明しました。逆に朝食を取らないと朝から体がシャキっと動くことができず、メタボの原因を作ってしまうことになります。
参考文献 
Yoshizaki T, Tada Y, Hida A, Sunami A, Yokoyama Y, Yasuda J, Nakai A, Togo F, Kawano Y. :Effects of feeding schedule changes on the circadian phase of the cardiac autonomic nervous system and serum lipid levels.Eur J Appl Physiol. 2013 Oct;113(10):2603-11. doi: 10.1007/s00421-013-2702-z. Epub 2013 Aug 7.

一日のリズムを作るためのに効果的な朝食の内容は?

 動物実験の結果から、体内時計をうまく調節させるには肝臓や膵臓にある子時計が関係していることがわかっています。食事により膵臓から分泌されるインスリンが多くなると、サイトカインを介して肝臓の時間遺伝子の発現が増えます。つまりインスリンを出やすくする朝食が、体内時計を動かすと言えます。具体的にはGI値が高い(=食後の血糖をあげやすい)食材である、白米やパン、うどんといった炭水化物を朝食でとると、体内時計を前進させやすくなり、ダイエットに効果的となります。
 一般的にGI値が高い食材がダイエットには不向きと考えられていますので、この内容は意外に思われるかもしれませんが、体内リズムを整え代謝を活発にするという観点からは、炭水化物を朝食でとることは重要と言えます(もちろんとりすぎはいけませんが・・・)。
また、DHAやEPAといった魚の油もインスリン機能を高めます。このことから、一日を健康に過ごす理想の朝食の組み合わせは、「ご飯と焼き魚」が一番と言えるかもしれません。

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~時間栄養学を生活に活かそう~ (1)体内時計とは?

2019/12/18
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 皆さんは「体内時計」という言葉はご存知でしょう。海外旅行に行くと時差ボケになり、眠気やだるさを感じることがあると思います。これは体内時計のリズムが狂ってしまうからです。1997年頃時計遺伝子が発見され約20年経過しました。ここから時間と体の仕組みの研究が進み、その中でも時間栄養学は栄養学の新しい分野として確立しました。

 今回から数回にわたり時間栄養学をご紹介していきたいと思います。時間と栄養の関係を知ることで、健康に過ごしていただくヒントになれば幸いです。

体内にある「親子」の時計

「時計を見なくてもお昼ごはんの前には決まってお腹がすくので、時間がだいたい分かる」ということはよく経験します。これがいわゆる腹時計です。最近の研究では腹時計以外にも体の各臓器に「時計」があることがわかってきました。そして各臓器にある時計は脳内にあるおおもとの時計によって制御されていることがわかっています。この脳内の時計が「親時計(中枢時計)」で、各臓器にある時計が「子時計(末梢時計)」と言われます。

 それぞれの臓器にある子時計は胃腸・肝臓・心臓・腎臓・筋肉など、あらゆる組織に存在しています。そして一日の中でもリズム(日内変動)をもっています。たとえば肝臓では糖や脂肪の合成・分解やエネルギー代謝に日内変動が見られます。そしてこれらの子時計は、脳の視床下部にあるSCN:suprachiasmatic nucleus という部位にある親時計によって制御されています。親時計は、外界からの光刺激を目の網膜を通して受け入れます。親時計は親時計からホルモンや神経伝達物質や食事の刺激などを介して、子時計に時間情報を伝えています。この親時計からの刺激をうけて、体の各所の子時計に作用して睡眠と覚醒・エネルギー代謝などに日内リズムをもたらすことがわかっています。そしてこの約24時間の日内変動をもたらしてくれるのは、各臓器の細胞に存在する時計遺伝子です。この時計遺伝子がなくなると日内変動が消失してしまうことがわかっています。

親子の時計(体内時計)のことを知れば健康に過ごせる!

 これまで病気に対し、食事や運動・お薬の治療で対応しています。今後もこれが変わることはありません。しかし、時間という概念を加えることで、さらに健康増進が期待できます。これが時間栄養学・時間運動学といった考え方です。今後数回に渡っていくつかの項目を取り上げていこうと思います。
お問合せはTEL: 078-781-1838
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