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【神戸市民・50歳以上の今年度偶数歳の方】胃がん内視鏡検診を受けてみませんか?

2020/10/28
経鼻内視鏡
コロナ禍のなかで、COVID-19とインフルエンザの同時流行が懸念されており、普段から健康を維持することの重要性がこれまで以上に認識されていると思います。

胃がんは早期発見できれば完治することができる病気になっていますが、残念ながらまだまだ進行がんで発見され命を落とされる方があとを絶ちません。
胃がん検診では、これまでのバリウムを使った造影検査よりも内視鏡検査を行うことで、胃がんの早期発見ができることがわかっています。
当院では以前より上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行っており、保険診療で行う検査以外に神戸市胃がん内視鏡検査も行っています。


当院では保険診療での胃カメラの検査数は今年4月の緊急事態宣言のころにほぼゼロになりましたが、現在はほぼ前年並みの件数を行っています。
しかし、神戸市胃がん内視鏡検診は依然として少ないままで推移しています。検診は自粛が続いているのでしょうか?
この状態が長く続くと胃がんの発見が遅れることに繋がりかねません。
健康を維持するためには各種検診をぜひわ忘れずに受けていただきたいと思います。

神戸市胃がん内視鏡検診は神戸市民の方のうち50歳以上の方で、今年度偶数歳になる方が対象です。
50~68歳の方は自己負担額2,000円、70歳以上の方は無料で受けられます。
ご興味を持たれた方はお気軽に当院までお問い合わせください。



【日本の論文紹介】ピロリ菌除菌はボノプラザンを使えば2剤でも3剤併用と同様の除菌結果が期待できるのか!?

2020/3/29
ピロリ菌陽性の胃
今回の記事は、ピロリ菌除菌についてです。ピロリ菌は胃の粘膜に定着すると胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどを引き起こす細菌です。ピロリ菌の除菌を行うと、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制効果や、胃がん発生率の低下の効果が実証されています。ピロリ菌の除菌療法が世界中で行われており、日本でも保険適応となっています。

当院ではピロリ菌の診断治療を積極的に行っています。
血液検査で胃がんリスクを調べる胃がんリスク検診(ABC検診)はこちらを参照ください。

ピロリ菌除菌療法の基礎知識

論文の内容に入る前に、除菌療法の基礎知識について触れておこうと思います。

除菌には胃酸分泌抑制剤と抗菌薬の併用療法が行われていますが、近年抗菌薬の一つのクラリスロマイシンに対して耐性を持つピロリ菌が出現し、除菌率の低下が問題になっています。
これまで胃酸分泌抑制剤としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)を含む併用療法が広く使われていましたが、クラリスロマイシンに対する耐性菌により除菌率は70%程度に低下が問題になっていました。
2014年にPPIよりも強力な酸分泌抑制効果があるボノプラザン(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー:P-CAB)が発売され、以後除菌療法に用いられています。このボノプラザンと抗菌薬アモキシシリン・クラリスロマイシンの3剤併用療法(VAC療法)では、クラリスロマイシン感受性菌だけでなく、クラリスロマイシンに耐性菌に対しても約90%の高い除菌率を示したことから、日本ではピロリ菌の一次除菌療法として広く行われています。
 
今回の記事では、日本人を対象に、ピロリ菌除菌療法のVAC療法のうち耐性菌の問題があるクラリスロマイシンを除いた、ボノプラザンとアモキシシリンの2剤併用療法(VA療法)の除菌効果を、VAC療法と比較検討した論文を紹介します。

論文の紹介

今回は、ピロリ菌の除菌療法についての論文でGutに掲載された"Seven-day vonoprazan and low-dose amoxicillin dual therapy as first-line Helicobacter pylori treatment: a multiplecentre randomised trial in Japan (ヘリコバクター・ピロリ一次除菌療法としての7日間のボノプラザンと低用量アモキシシリンによる2剤併用療法:日本での多施設での無作為比較試験)"を紹介します。
Seven-day vonoprazan and low-dose amoxicillin dual therapy as first-line Helicobacter pylori treatment: a multicentre randomised trial in Japan.
Suzuki S, Gotoda T, Kusano C, Ikehara H, Ichijima R, Ohyauchi M, Ito H, Kawamura M, Ogata Y, Ohtaka M, Nakahara M, Kawabe K.
Gut. 2020 Jan 8. pii: gutjnl-2019-319954. doi: 10.1136/gutjnl-2019-319954. [Epub ahead of print]

1.研究デザイン

【対象者】
2018年10月から2019年6月までの期間の日本の7施設で、腹部症状のある人や胃がん検診の目的で上部消化管内視鏡検査が行われた患者をエントリー。20歳から79歳までで胃の生検組織の培養からピロリ菌が検出された患者が対象。(ピロリ菌除菌歴を有する者・除菌療法の薬剤にアレルギーがある者・プロトンポンプ阻害薬の使用・抗菌薬やステロイドの使用がある者・妊娠や授乳中の者・同意が得られない者を除外)
【ピロリ菌同定と薬剤感受性試験】
2箇所以上の胃生検組織からピロリ菌を同定し、アモキシシリン・クラリスロマイシンの薬剤感受性試験を施行。
【研究アウトカム】
対象者を無作為に以下の2群に割り付ける
・VA2剤群(ボノプラザン20mg/回+アモキシシリン750mg/回を1日2回、7日間)
・VAC3剤群(ボノプラザン20mg/回+アモキシシリン750mg/回+クラリスロマイシン200mg/回を1日2回、7日間)
内服終了後少なくとも4週間後に尿素呼気試験で除菌判定を行う

2.結果

【除菌率】
(ITT解析)VA2剤群:84.5% VAC3剤群:89.2% P値:0.073
(PP解析)VA2剤群:87.1% VAC3剤群:90.2% P値:0.024

*対象となった全数を解析したITT解析では、VA2剤群のVAC3剤群に対する非劣勢は証明できなかった
*対象からフィローアップできなかった症例や副作用で継続できなかった症例を除いた、PP解析ではVA2剤群はVAC3剤群に対して非劣性が証明された。
【クラリスロマイシン耐性がある条件での除菌率】
(PP解析)VA2剤群:92.3% VAC3剤群:76.2% P値:0.048

*クラリスロマイシン耐性がある群では、VA2剤群がVAC3剤群と比較して有意に除菌率が高かった
【有害事象】
 有害事象は下痢・腹部膨満感・便秘・皮疹などで両群に差は認めなかった。

3.結論

7日間のボノプラザンと低用量アモキシシリンの2剤併用療法は、ピロリ菌除菌療法として充分な除菌率を認めた。また、ボノプラザンを用いた3剤併用療法と比較してクラリスロマイシン耐性例に対して高い除菌率を認めた。有害事象は両群に差は認めなかった。

まとめ

近年、抗菌薬の使用拡大に伴い、抗菌薬が効かない細菌(耐性菌)が認められるようになり、治療に難渋するケースが増えてきており、問題となっています。なかでもクラリスロマイシン耐性菌は頻度が高く臨床上問題となっています。近年ピロリ菌の除菌療法は胃酸分泌抑制薬であるボノプラザンと、抗菌薬のアモキシシリンとクラリスロマイシンの3剤併用療法が広く行われており、日本では一次除菌療法として保険適応となっています。論文ではボノプラザンとアモキシシリンの2剤による除菌療法を、クラリスロマイシンを含んだ3剤の除菌療法と比較を行っています。

結果をまとめると以下のとおりです。
・2剤併用療法は3剤併用療法と同様の除菌効果がることは残念ながら示されなかったが、一次除菌療法としては充分に許容できる高い除菌率を認めた。
クラリスロマイシン耐性例ではむしろ2剤併用療法のほうが3剤併用療法よりも有意に高い除菌率を認めた
有害事象は3剤併用療法と差を認めなかった

この論文の結果で特に注目したいのが、クラリスロマイシン耐性がある場合は、2剤併用療法のほうが除菌率が高いという点です。
これからは薬剤耐性菌の存在を確認するためにもピロリ菌の培養同定とともに、クラリスロマイシンに対する薬剤感受性試験を行うことの重要性が高まってくるかもしれません。
今後の症例の積み重ねによる検討が必要ですが、ひょっとしたら現在保険適応となっている一次除菌療法の3剤併用療法から、今後は2剤併用療法が主流となる可能性を秘めていると思います。今後の検討に期待したいです。

ピロリ菌がいるかどうか気になる方や除菌について不安な方は、ピロリ菌除菌を積極的に行っている当院までぜひお任せください。
薬とドクター

~時間栄養学を生活に活かそう~ (4)腸内細菌叢の日内変動と病気について

2020/3/16
バランスのよい腸内細菌叢
 今、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)が話題になっており発症しないよう十分な対策が必要です。別のブログにも記載したとおり、予防にはしっかりした手洗いと、咳エチケットが重要です。

 手洗いが不足すると、新型コロナウイルスやインフルエンザ以外にもウイルスや細菌の体内への侵入を許してしまい、胃腸炎を生じることがあります。3月に入ったこの時期でも、胃腸炎症状で外来を受診される方が多いです。よく「腸の悪玉菌が増えてしまうので善玉菌が負けてしまい、腸炎をおこしている」といわれますが、そもそも腸内細菌とはどんな役割をしているのでしょうか?
今回の記事は、私達の腸管の中に住み着いている細菌(腸内細菌叢)と病気の関係、さらに体内時計により起こる腸内細菌叢の変化について考えようと思います。

腸内細菌叢と病気の関係

ヒトの腸管の中には100種類以上のさまざまな細菌が40兆個以上住み着いています。この腸管内に住み着いた多種・多様な細菌のグループのことを腸内細菌叢と言います。人の体の免疫システムは腸内細菌叢から様々な作用を受けています。
このようにヒトの腸管内に定着している細菌が、多くの臓器に相互に影響を及ぼしていることがわかってきており、ここ数年で腸内細菌叢に関する研究が非常に盛んになってきています。

(1)短鎖脂肪酸と腸内細菌叢の関係

食事で食物繊維やオリゴ糖を摂ると、腸内細菌叢の働きで腸管内で発酵・分解され、短鎖脂肪酸が作られます。この短鎖脂肪酸の増加は食欲の抑制やインスリン抵抗性の改善(少ない量のインスリンで効率よく血液から細胞内に糖分が取り入れられる状態)に繋がります。また短鎖脂肪酸の中でも酪酸は、制御性T細胞の誘導を起こすことで、体内の免疫系の調整に役立っています。また短鎖脂肪酸は腸管内を弱酸性に保つため、腸管免疫の制御にも関係しています。

(2)腸内細菌叢と腸管炎症の関係

炎症性腸疾患(狭義の意味でクローン病と潰瘍性大腸炎)は、腸管免疫の異常により腸管で慢性炎症が生じる難病です。炎症性腸疾患では腸内細菌叢のバランスが崩れ、存在する菌種の種類が数が少なくなることが知られています。また、ペニシリン系やセフェム系抗菌薬を使用した際に、腸内細菌叢が乱れ腸炎を起こすClostridium difficil感染腸炎は、再発を繰り返しやすく治療に難渋する病気です。健常者の糞便から得た腸内細菌をClostridium difficil感染腸炎の患者の大腸に移植する便移植療法が行われるようになり効果を上げています。潰瘍性大腸炎の患者に対して、抗菌薬投与後に便移植療法を行ったところ症状の改善があったとの報告もあります。またクローン病では Clostridium 属の減少による腸内環境の悪化が病態と関係があると考えられています。このように、腸内細菌叢の多様性の低下が腸管炎症と関係があると考えられます。

(3)腸内細菌叢と腸脳相関

腸管運動と脳は迷走神経を介して密接につながっており、これを「腸脳相関」と言います。強いストレスがかかると急に腹痛や下痢を生じる過敏性腸症候群という病気がありますが、これは「腸脳相関の乱れ」からくる疾患とも言えます。腸内細菌叢と腸脳相関の間にも関連があることがわかってきています。

(4)腸内細菌叢と神経疾患の関係

パーキンソン病の人は便秘を生じやすいことが知られていますが、短鎖脂肪酸の減少が病気を悪化させる要因と考えられており、腸内細菌叢との関係が示唆されています。その他、うつ病や慢性疲労症候群の方の腸内細菌はそうではない人と比較して腸内細菌叢のバランスが変化していることが知られております。

(5)腸内細菌叢と慢性腎臓病の関係

マウスの実験では慢性腎臓病を引き起こす尿毒素であるインドキシル硫酸やトリメチルアミンNオキシド(TMAO)は、腸内細菌叢が変化することで増加することもわかってきました。腸管と腎臓の間にも「腸腎相関」があると提唱されてきており、腸内細菌叢の変化は慢性腎臓病の発症とも相関があると考えられています。

(6)腸内細菌叢と心臓血管病の関係

TMAOの増加はマクロファージへのコレステロール蓄積を増加させ,血管内のプラークからのコレステロール引き抜きを減少させることで動脈硬化を進行させることが知られています。またTMAOは血小板凝集能を増加させることで血栓形成を促進します。腸内細菌叢の変化は心臓血管病の発症とも深く関与しています。

体内時計が腸内細菌叢に与える影響

これまで腸内細菌叢の変化が様々な病気に関係していることを記しました。時間栄養学について過去に記したブログにもるように、体内時計には親子の時計が存在します。親時計は脳下垂体の視交叉上核にあり、体内の末梢組織にはそれぞれ子時計が存在しており、腸管にも子時計が存在しています。最近の研究では、腸内細菌叢が体内時計の働きによって日内変動を生じていることがわかってきました。これについて基礎的な研究ではありますが、ご紹介したいと思います。

(1)日内変動をおこす腸内細菌叢

日常の食事の内容が変化したり、運動不足などさまざまな要因で腸内細菌叢の構成は変化します。また、一日の中でも腸内細菌叢の構成が変動を起こしています。ヒトの糞便ではバクテロイデス属で日内変動が確認されています。マウスでもラクトバチルス属やバクテロイデス属で日内変動があります。時間遺伝子をノックアウトしたマウスを用いた実験では、これらの日内変動が消失することがわかっています。また、高脂肪食を与えたマウスでは腸内細菌叢のバランスを変化させ、腸内細菌叢の日内変動のリズムを弱めることが報告されています。

(2)腸内細菌叢の日内変動のみだれが体に与える影響

時差ボケにより体内時計が乱れた時、腸内細菌叢の日内変動はどのように変化するのでしょうか。2014年にイスラエルで発表された論文では、実験的に時差ボケを生じたマウスの便や、遠距離の飛行機旅行にでかけた人の、旅行前・旅行中・旅行後の糞便を解析すると、時差ボケがない状態と比較して腸内細菌叢が大きく変化していました。とくに増加すると肥満を生じやすくなると言われているファーミキューテスの増加が認められました。このことから、体内時計を乱さないように規則正しい生活を送ることで、腸内細菌叢が安定し肥満を生じにくくすることが示唆されます。これらの研究結果は昼夜逆転がある人や夜勤で不規則な生活をしている人が肥満を起こしやすい理由の一つと言えるかもしれません

●まとめ

・腸内細菌は、様々な病気(消化管・心臓血管病、腎臓、神経疾患など)と関連がある
・腸内細菌叢の構成は一日の中で変化する日内変動があるが、高脂肪食の摂取は日内変動を小さくしてしまう
・昼夜逆転や時差ボケは腸内細菌叢の日内変動に乱れを生じ、肥満を起こす要因となる

【日本の論文紹介】納豆を食べると死亡リスクが低下する!

2020/2/26
納豆
日本人は納豆や味噌といった大豆発酵食品を日常的に食べています。「納豆は健康にいい!」と言われていますが、その知られざる健康パワーが最近明らかになってきています。
今回は、最近発表された日本人を対象に研究された論文をご紹介します。

納豆などの大豆発酵食品の摂取で、心筋梗塞などによる死亡のリスクがが低下する

国立がん研究センターから発表された日本人を対象とした研究論文をご紹介します。
この論文では「JPHC研究」という大規模なコホート研究から得られた成果をもとに発表されています。JPHCは日本人を対象に、いろいろな生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞がどのように関わり合いを持っているかを調べた大規模な研究です。

健康食品として大豆は注目を浴びています。これまでにも納豆や味噌といった大豆発酵食品の摂取と血圧との関係や納豆の摂取と死亡リスクを研究した論文はありましたが、研究ごとに結果が異なるものもあり、一定の見解が得られていません。この論文では多目的コホート研究において、大豆食品、発酵性大豆食品摂取量と死亡リスクとの関連について検討されています。

循環器病になっていない人から5年間に得られたアンケート結果より、総大豆摂取量・発酵性/非発酵性大豆食品摂取量・各大豆食品(納豆・味噌・豆腐)摂取量を量別に5つのグループに分けて検討されました。その後約15年間の追跡期間の総死亡・がん死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡・脳血管疾患死亡)との関連を男女別に調べました。

結果をまとめると以下の通りです。
・総大豆摂取量と死亡率には男女とも相関がなかった
発酵性大豆食品の摂取が多い人は男女とも死亡リスクが低かった
・各大豆加工食品のうち、女性では納豆・味噌の摂取量が多い人は死亡リスクが低かったが、男性にはその傾向がなかった。豆腐にはは男女ともに死亡率低下の傾向はなかった。
・死因別の検討では、いずれの食品もがん死亡低下の傾向はなかったが、循環器病の死亡率は男女とも納豆の摂取量が多いほど低下が認められた。特に、納豆を1日に50g以上摂取している人は摂取していない人よりも循環器病の死亡リスクが10%低かった


引用 Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study
BMJ 2020; 368 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m34 (Published 29 January 2020)
Katagiri R1, Sawada N2, Goto A1, Yamaji T1, Iwasaki M1, Noda M3, Iso H4, Tsugane S1; Japan Public Health Center-based Prospective Study Group.
健康
日本人の伝統的な食生活の中で、大豆発酵食品である納豆や味噌は欠かせないものです。日本人は納豆や味噌を多く摂る食習慣が死亡率を下げ、長寿につながっていることが示唆される研究です。特に納豆1パック(約50g)を毎日摂取することで、心筋梗塞などによる循環器病リスクが低下したという結果は、欧米化した日本人の食生活を見直すきっかけにしたいところです。

1月はノロウイルスの胃腸炎に要注意!!

2020/1/15
皆さんは食中毒による胃腸炎を起こす季節としていつが思い浮かぶでしょうか?
夏場の熱くて湿気の多い季節を思い浮かべる方が多いかもしれません。食中毒を起こす原因として、夏場は細菌によるものが多いですが、冬の寒い時期にはノロウイルスによる食中毒に要注意です。

ノロウイルスの胃腸炎による食中毒の発生状況

ノロウイルス胃腸炎による食中毒件数
ノロウイルスによる食中毒発生状況
(政府広報オンラインより引用)
上のグラフは月別のノロウイルスによる食中毒の発生状況を示しています。これを見ると冬の1月から3月の寒くて乾燥した時期に感染が圧倒的に多いことがわかります。2019年の12月には埼玉県を合宿のため訪れていた高校サッカー部員44人が、腹痛などの症状を生じ、ノロウイルスによる集団食中毒であったことが報道されています。ノロウイルスの胃腸炎は家庭内だけでなく飲食店などで集団発生することがあり、冬の時期に最も警戒すべき感染症の一つです。

ノロウイルス胃腸炎の症状・治療は?

ノロウイルスによる胃腸炎は他の感染性胃腸炎と同様に、下痢・腹痛・嘔吐といったものですが、以下のような特徴があります。
・下痢:腹痛を伴う水様性の便が頻回に排便されるため、脱水症を起こしやすい
・嘔吐:突然の嘔気や嘔吐を生じる
・発熱:38度以上になることもある
症状消失後も長期(7日から30日程度)に渡り、便からウイルスが排泄される

治療は、お粥やうどんといった軽めの消化の良い食事にとどめ、腸管安静を図ります。嘔吐・下痢が強く脱水症を生じやすいためスポーツドリンクや経口補水液を少量ずつ頻回に飲用します。医療機関では脱水が強く経口摂取が不能な場合は点滴が行われます。ウイルスが原因なので抗菌薬は無効です。整腸剤や症状に応じて解熱剤や制吐剤が処方されます。

ノロウイルス胃腸炎の感染経路は?

ノロウイルスによる食中毒の原因で最も多いのは調理を担当する人による二次感染です。ヒトの便の中にノロウイルスがいても、必ずしも症状が出ない場合があり、この状態を不顕性感染といいます。不顕性感染のヒトの便1g中には数億個のウイルスが含まれていることがあり、排便時の手洗いが不足していると、汚染された手で調理をすることで調理器具や食材を扱うことで、容易に感染が広まってしまいます。ノロウイルスは10~100個程度でもヒトの腸管で増殖し、感染が広まります。
不顕性感染の人から広まる二次感染以外にも感染経路があります。カキ、ハマグリ、アサリなどの二枚貝にもノロウイルスが含まれていることがあり、それを食事で食べることで感染することがあります。
また、感染者の吐物にもノロウイルスが含まれており、それを処理した人がノロウイルスを吸い込み感染を生じる(飛沫感染)こともあります。ノロウイルスは乾燥に強く、気温4度では約2ヶ月間、気温20度では約1ヶ月間環境にとどまると言われています。
ノロウイルスは感染者の便から排泄され、下水から海へと流れ込み、二枚貝に蓄積され、それをヒトが摂取することで感染はひろまるといった具合に、環境の中で循環しています。

ノロウイルス感染経路

ノロウイルス胃腸炎を起こさないためには?

調理に携わる人は、普段から自分の体調に注意を払う必要があります。特に下痢や腹痛といった消化器症状がある場合は、ノロウイルスの感染を考え、調理を担当しないようにしましょう。また不顕性感染の場合もありますので、調理前の手洗いを徹底することや、まな板などの調理器具を熱湯で殺菌消毒を行う必要があります。
ノロウイルスは熱に弱いので、食材を中心部まで85度以上になるように加熱することでウイルスは死滅します。十分な加熱処理がノロウイルス感染予防のポイントです。
手洗いは、石鹸で指先から手首までむらなく洗ったあと、流水で60秒以上すすぐことで手についたウイルスの量を感染しない量まで減少させることが可能です。
ノロウイルス予防法

感染した人が嘔吐してしまったら・・・

吐物の中にもノロウイルスが含まれていますので、適切に処理してウイルスを排除することが大切です。以下の手順で行います。

1.吐物の処理の前に、感染予防のために両手に手袋・使い捨てのエプロン・マスクを着用し、素肌の露出を減らす
2.空気の流れを考え換気する
3.吐物を中心部に拭き寄せる
4.吐物とその周り(半径2m)に新聞紙を敷き詰める
5.次亜塩素酸ナトリウムが含まれた消毒液を上からかけて.拭き取り、ポリ袋に密封する
6.10分以上経過してから床を水拭きする
7.身につけていた手袋・エプロン・マスクも密封し処分する

消毒液の作り方は神戸市保健所のサイトを参考にしてください。

ノロウイルス嘔吐時の対応
ノロウイルス胃腸炎は強い消化器症状が出るだけでなく、二次感染を引き起こす事があるやっかいな病気です。手洗いや食材の加熱・調理器具の消毒・時間をかけた手洗いで予防が可能です。日頃から注意して感染予防に努めましょう。
お問合せはTEL: 078-781-1838
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