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【日本の論文紹介】ピロリ菌除菌はボノプラザンを使えば2剤でも3剤併用と同様の除菌結果が期待できるのか!?

2020/3/29
ピロリ菌陽性の胃
今回の記事は、ピロリ菌除菌についてです。ピロリ菌は胃の粘膜に定着すると胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどを引き起こす細菌です。ピロリ菌の除菌を行うと、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制効果や、胃がん発生率の低下の効果が実証されています。ピロリ菌の除菌療法が世界中で行われており、日本でも保険適応となっています。

当院ではピロリ菌の診断治療を積極的に行っています。
血液検査で胃がんリスクを調べる胃がんリスク検診(ABC検診)はこちらを参照ください。

ピロリ菌除菌療法の基礎知識

論文の内容に入る前に、除菌療法の基礎知識について触れておこうと思います。

除菌には胃酸分泌抑制剤と抗菌薬の併用療法が行われていますが、近年抗菌薬の一つのクラリスロマイシンに対して耐性を持つピロリ菌が出現し、除菌率の低下が問題になっています。
これまで胃酸分泌抑制剤としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)を含む併用療法が広く使われていましたが、クラリスロマイシンに対する耐性菌により除菌率は70%程度に低下が問題になっていました。
2014年にPPIよりも強力な酸分泌抑制効果があるボノプラザン(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー:P-CAB)が発売され、以後除菌療法に用いられています。このボノプラザンと抗菌薬アモキシシリン・クラリスロマイシンの3剤併用療法(VAC療法)では、クラリスロマイシン感受性菌だけでなく、クラリスロマイシンに耐性菌に対しても約90%の高い除菌率を示したことから、日本ではピロリ菌の一次除菌療法として広く行われています。
 
今回の記事では、日本人を対象に、ピロリ菌除菌療法のVAC療法のうち耐性菌の問題があるクラリスロマイシンを除いた、ボノプラザンとアモキシシリンの2剤併用療法(VA療法)の除菌効果を、VAC療法と比較検討した論文を紹介します。

論文の紹介

今回は、ピロリ菌の除菌療法についての論文でGutに掲載された"Seven-day vonoprazan and low-dose amoxicillin dual therapy as first-line Helicobacter pylori treatment: a multiplecentre randomised trial in Japan (ヘリコバクター・ピロリ一次除菌療法としての7日間のボノプラザンと低用量アモキシシリンによる2剤併用療法:日本での多施設での無作為比較試験)"を紹介します。
Seven-day vonoprazan and low-dose amoxicillin dual therapy as first-line Helicobacter pylori treatment: a multicentre randomised trial in Japan.
Suzuki S, Gotoda T, Kusano C, Ikehara H, Ichijima R, Ohyauchi M, Ito H, Kawamura M, Ogata Y, Ohtaka M, Nakahara M, Kawabe K.
Gut. 2020 Jan 8. pii: gutjnl-2019-319954. doi: 10.1136/gutjnl-2019-319954. [Epub ahead of print]

1.研究デザイン

【対象者】
2018年10月から2019年6月までの期間の日本の7施設で、腹部症状のある人や胃がん検診の目的で上部消化管内視鏡検査が行われた患者をエントリー。20歳から79歳までで胃の生検組織の培養からピロリ菌が検出された患者が対象。(ピロリ菌除菌歴を有する者・除菌療法の薬剤にアレルギーがある者・プロトンポンプ阻害薬の使用・抗菌薬やステロイドの使用がある者・妊娠や授乳中の者・同意が得られない者を除外)
【ピロリ菌同定と薬剤感受性試験】
2箇所以上の胃生検組織からピロリ菌を同定し、アモキシシリン・クラリスロマイシンの薬剤感受性試験を施行。
【研究アウトカム】
対象者を無作為に以下の2群に割り付ける
・VA2剤群(ボノプラザン20mg/回+アモキシシリン750mg/回を1日2回、7日間)
・VAC3剤群(ボノプラザン20mg/回+アモキシシリン750mg/回+クラリスロマイシン200mg/回を1日2回、7日間)
内服終了後少なくとも4週間後に尿素呼気試験で除菌判定を行う

2.結果

【除菌率】
(ITT解析)VA2剤群:84.5% VAC3剤群:89.2% P値:0.073
(PP解析)VA2剤群:87.1% VAC3剤群:90.2% P値:0.024

*対象となった全数を解析したITT解析では、VA2剤群のVAC3剤群に対する非劣勢は証明できなかった
*対象からフィローアップできなかった症例や副作用で継続できなかった症例を除いた、PP解析ではVA2剤群はVAC3剤群に対して非劣性が証明された。
【クラリスロマイシン耐性がある条件での除菌率】
(PP解析)VA2剤群:92.3% VAC3剤群:76.2% P値:0.048

*クラリスロマイシン耐性がある群では、VA2剤群がVAC3剤群と比較して有意に除菌率が高かった
【有害事象】
 有害事象は下痢・腹部膨満感・便秘・皮疹などで両群に差は認めなかった。

3.結論

7日間のボノプラザンと低用量アモキシシリンの2剤併用療法は、ピロリ菌除菌療法として充分な除菌率を認めた。また、ボノプラザンを用いた3剤併用療法と比較してクラリスロマイシン耐性例に対して高い除菌率を認めた。有害事象は両群に差は認めなかった。

まとめ

近年、抗菌薬の使用拡大に伴い、抗菌薬が効かない細菌(耐性菌)が認められるようになり、治療に難渋するケースが増えてきており、問題となっています。なかでもクラリスロマイシン耐性菌は頻度が高く臨床上問題となっています。近年ピロリ菌の除菌療法は胃酸分泌抑制薬であるボノプラザンと、抗菌薬のアモキシシリンとクラリスロマイシンの3剤併用療法が広く行われており、日本では一次除菌療法として保険適応となっています。論文ではボノプラザンとアモキシシリンの2剤による除菌療法を、クラリスロマイシンを含んだ3剤の除菌療法と比較を行っています。

結果をまとめると以下のとおりです。
・2剤併用療法は3剤併用療法と同様の除菌効果がることは残念ながら示されなかったが、一次除菌療法としては充分に許容できる高い除菌率を認めた。
クラリスロマイシン耐性例ではむしろ2剤併用療法のほうが3剤併用療法よりも有意に高い除菌率を認めた
有害事象は3剤併用療法と差を認めなかった

この論文の結果で特に注目したいのが、クラリスロマイシン耐性がある場合は、2剤併用療法のほうが除菌率が高いという点です。
これからは薬剤耐性菌の存在を確認するためにもピロリ菌の培養同定とともに、クラリスロマイシンに対する薬剤感受性試験を行うことの重要性が高まってくるかもしれません。
今後の症例の積み重ねによる検討が必要ですが、ひょっとしたら現在保険適応となっている一次除菌療法の3剤併用療法から、今後は2剤併用療法が主流となる可能性を秘めていると思います。今後の検討に期待したいです。

ピロリ菌がいるかどうか気になる方や除菌について不安な方は、ピロリ菌除菌を積極的に行っている当院までぜひお任せください。
薬とドクター

【Google doodle】3月20日 センメルヴェイス・イグナーツの手洗い提唱を称えて

2020/3/23
Google doodle
私はいつもPCに向かって仕事をしており、ネット検索を行わない日はありません。
ネット検索はもっぱらGoogleを利用しています。一日に少なくとも10回以上は検索を行っています。
その中で、先日気になったのがGoogle doodleの動画です。
Google doodleとは、祝日や記念日などにその日にあわせたデザインに変更された検索エンジン「Google」のロゴのことです。
3月20日に表示されていたのが、「センメルヴェイス・イグナーツの手洗い提唱を称えて」という動画です。
新型コロナウイルスの感染予防には手洗いが重要なことは知られていますが、このリンクのページではストップウォッチを持ったセンメルヴェイス・イグナーツが登場し、WHOのガイドラインに従った効果的な手洗いの手順が示されていす。
動画では手洗いの手順は以下の通りです。
まず、手を水で湿らせて、手の表面すべてをカバーできる量の石鹸を手に取る。
手順1:手のひらと手のひらをこすり合わせる
手順2:右手のひらを左手の上に乗せてこすり合わせる
手順3:指の間を洗う
手順4:親指と手のひらをねじり洗いする
手順5:手首を忘れずに洗う
最後に十分に流水で洗い流す。

センメルヴェイス・イグナーツの功績

医療の世界で感染防御の話がされるとき、必ずと言っていいほどセンメルヴェイス・イグナーツが登場します。
彼は「感染防御の父」と呼ばれています。
彼の功績は、手洗いを行うことで感染リスクが低下することを提唱したことにあります。
センメルヴェイスはハンガリーのブダ(ブダペスト)出身の産科医で、1844年に大学を卒業しています。1840年代はまだ細菌がわかっておらず、傷は可能することで治ると考えられていました。センメルヴェイスは、ウィーン大学の産科に勤務していた際に、産褥熱の予防法を発見しました。
医師がさらし粉で手を消毒することで、産褥熱の発生が低下し、手指の消毒が感染防御に役立っていること初めて示しました。
詳しくはBDのサイトを参照ください。
彼の考え方は当時の人々には受け入れられませんでしたが、彼の死後、コッホやパスツールによって細菌の存在が証明され、彼の功績は広く認められるようになっています。
彼の功績をたたえ、ビダペスト大学は創立200周年の1969年にセンメルヴェイス大学に改称されています。センメルヴェイス大学医学部は世界でもトップクラスの業績を持っています。

手洗いで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防しよう

今回のGoogleの動画は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防のために、WHOが提唱している手洗いキャンペーン(The safe hands challenge)と関連していると思われます。
たった3ヶ月足らずで全世界にひろまり、収まる気配のない新型コロナウイルスですが、予防にはまず手洗いが一番です。とくに外出先でのドアノブや電車の吊り革などには新型コロナウイルスが付着し、接触感染の可能性があります。また、食事の際に手についたウイルスを口から取り入れてしまう可能性もあります。外出からの帰宅時や、調理の前、食事の前はこの動画にあるように十分に時間をかけて手洗いを行うようにしましょう。

~時間栄養学を生活に活かそう~ (4)腸内細菌叢の日内変動と病気について

2020/3/16
バランスのよい腸内細菌叢
 今、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)が話題になっており発症しないよう十分な対策が必要です。別のブログにも記載したとおり、予防にはしっかりした手洗いと、咳エチケットが重要です。

 手洗いが不足すると、新型コロナウイルスやインフルエンザ以外にもウイルスや細菌の体内への侵入を許してしまい、胃腸炎を生じることがあります。3月に入ったこの時期でも、胃腸炎症状で外来を受診される方が多いです。よく「腸の悪玉菌が増えてしまうので善玉菌が負けてしまい、腸炎をおこしている」といわれますが、そもそも腸内細菌とはどんな役割をしているのでしょうか?
今回の記事は、私達の腸管の中に住み着いている細菌(腸内細菌叢)と病気の関係、さらに体内時計により起こる腸内細菌叢の変化について考えようと思います。

腸内細菌叢と病気の関係

ヒトの腸管の中には100種類以上のさまざまな細菌が40兆個以上住み着いています。この腸管内に住み着いた多種・多様な細菌のグループのことを腸内細菌叢と言います。人の体の免疫システムは腸内細菌叢から様々な作用を受けています。
このようにヒトの腸管内に定着している細菌が、多くの臓器に相互に影響を及ぼしていることがわかってきており、ここ数年で腸内細菌叢に関する研究が非常に盛んになってきています。

(1)短鎖脂肪酸と腸内細菌叢の関係

食事で食物繊維やオリゴ糖を摂ると、腸内細菌叢の働きで腸管内で発酵・分解され、短鎖脂肪酸が作られます。この短鎖脂肪酸の増加は食欲の抑制やインスリン抵抗性の改善(少ない量のインスリンで効率よく血液から細胞内に糖分が取り入れられる状態)に繋がります。また短鎖脂肪酸の中でも酪酸は、制御性T細胞の誘導を起こすことで、体内の免疫系の調整に役立っています。また短鎖脂肪酸は腸管内を弱酸性に保つため、腸管免疫の制御にも関係しています。

(2)腸内細菌叢と腸管炎症の関係

炎症性腸疾患(狭義の意味でクローン病と潰瘍性大腸炎)は、腸管免疫の異常により腸管で慢性炎症が生じる難病です。炎症性腸疾患では腸内細菌叢のバランスが崩れ、存在する菌種の種類が数が少なくなることが知られています。また、ペニシリン系やセフェム系抗菌薬を使用した際に、腸内細菌叢が乱れ腸炎を起こすClostridium difficil感染腸炎は、再発を繰り返しやすく治療に難渋する病気です。健常者の糞便から得た腸内細菌をClostridium difficil感染腸炎の患者の大腸に移植する便移植療法が行われるようになり効果を上げています。潰瘍性大腸炎の患者に対して、抗菌薬投与後に便移植療法を行ったところ症状の改善があったとの報告もあります。またクローン病では Clostridium 属の減少による腸内環境の悪化が病態と関係があると考えられています。このように、腸内細菌叢の多様性の低下が腸管炎症と関係があると考えられます。

(3)腸内細菌叢と腸脳相関

腸管運動と脳は迷走神経を介して密接につながっており、これを「腸脳相関」と言います。強いストレスがかかると急に腹痛や下痢を生じる過敏性腸症候群という病気がありますが、これは「腸脳相関の乱れ」からくる疾患とも言えます。腸内細菌叢と腸脳相関の間にも関連があることがわかってきています。

(4)腸内細菌叢と神経疾患の関係

パーキンソン病の人は便秘を生じやすいことが知られていますが、短鎖脂肪酸の減少が病気を悪化させる要因と考えられており、腸内細菌叢との関係が示唆されています。その他、うつ病や慢性疲労症候群の方の腸内細菌はそうではない人と比較して腸内細菌叢のバランスが変化していることが知られております。

(5)腸内細菌叢と慢性腎臓病の関係

マウスの実験では慢性腎臓病を引き起こす尿毒素であるインドキシル硫酸やトリメチルアミンNオキシド(TMAO)は、腸内細菌叢が変化することで増加することもわかってきました。腸管と腎臓の間にも「腸腎相関」があると提唱されてきており、腸内細菌叢の変化は慢性腎臓病の発症とも相関があると考えられています。

(6)腸内細菌叢と心臓血管病の関係

TMAOの増加はマクロファージへのコレステロール蓄積を増加させ,血管内のプラークからのコレステロール引き抜きを減少させることで動脈硬化を進行させることが知られています。またTMAOは血小板凝集能を増加させることで血栓形成を促進します。腸内細菌叢の変化は心臓血管病の発症とも深く関与しています。

体内時計が腸内細菌叢に与える影響

これまで腸内細菌叢の変化が様々な病気に関係していることを記しました。時間栄養学について過去に記したブログにもるように、体内時計には親子の時計が存在します。親時計は脳下垂体の視交叉上核にあり、体内の末梢組織にはそれぞれ子時計が存在しており、腸管にも子時計が存在しています。最近の研究では、腸内細菌叢が体内時計の働きによって日内変動を生じていることがわかってきました。これについて基礎的な研究ではありますが、ご紹介したいと思います。

(1)日内変動をおこす腸内細菌叢

日常の食事の内容が変化したり、運動不足などさまざまな要因で腸内細菌叢の構成は変化します。また、一日の中でも腸内細菌叢の構成が変動を起こしています。ヒトの糞便ではバクテロイデス属で日内変動が確認されています。マウスでもラクトバチルス属やバクテロイデス属で日内変動があります。時間遺伝子をノックアウトしたマウスを用いた実験では、これらの日内変動が消失することがわかっています。また、高脂肪食を与えたマウスでは腸内細菌叢のバランスを変化させ、腸内細菌叢の日内変動のリズムを弱めることが報告されています。

(2)腸内細菌叢の日内変動のみだれが体に与える影響

時差ボケにより体内時計が乱れた時、腸内細菌叢の日内変動はどのように変化するのでしょうか。2014年にイスラエルで発表された論文では、実験的に時差ボケを生じたマウスの便や、遠距離の飛行機旅行にでかけた人の、旅行前・旅行中・旅行後の糞便を解析すると、時差ボケがない状態と比較して腸内細菌叢が大きく変化していました。とくに増加すると肥満を生じやすくなると言われているファーミキューテスの増加が認められました。このことから、体内時計を乱さないように規則正しい生活を送ることで、腸内細菌叢が安定し肥満を生じにくくすることが示唆されます。これらの研究結果は昼夜逆転がある人や夜勤で不規則な生活をしている人が肥満を起こしやすい理由の一つと言えるかもしれません

●まとめ

・腸内細菌は、様々な病気(消化管・心臓血管病、腎臓、神経疾患など)と関連がある
・腸内細菌叢の構成は一日の中で変化する日内変動があるが、高脂肪食の摂取は日内変動を小さくしてしまう
・昼夜逆転や時差ボケは腸内細菌叢の日内変動に乱れを生じ、肥満を起こす要因となる

コロナウイルス検査について思うこと(検査希望者の全数検査は行うべきか?)

2020/3/26
今回の記事は、新型コロナウイルスPCR検査について小さな内科診療所の医者が思うことを書いたものです。
コロナウイルスの最新のトピックスなどはありませんので最初にお断りしておきます。
(2020年3月11日 記事の表現を一部修正し、まとめを追加しました。)
まとめ
この記事を要約すると以下のようになります。
・新型コロナウイルス感染が広がってきており、PCR検査が行われるようになっている。
・「検査が広く行われないのはおかしい」といった、全例検査を主張する報道が見受けられる。
・臨床検査では「感度・特異度」を用いてその検査精度を評価されることが一般的で、感度が高い検査は除外診断に、特異度が高い検査は確定診断に有用である
・新型コロナウイルスに対するPCR検査は特異度は高いが、感度はそれほど高くない。よって、症状がある人に対しての確定診断に有用と考えられるが、症状がない人の除外診断には向かない。よって、接触歴や症状がある人を対象にPCR検査を行う基準は概ね妥当と考えられる。
・もし、PCR検査を対象を制限せずに検査希望者全員に行ってしまうと、医療現場は混乱し外来機能が低下してしまうことになり医療崩壊につながる可能性もある。正しい知識を身に着けて検査を行うべきである。
・新型コロナウイルス感染症に対して確立した治療はまだない。予防としては「手洗い」・「咳エチケット」・「人混みを避ける」・「発熱や風邪症状のときは自宅に待機する」・「毎日体温測定を行い体調管理を行う」といったことが挙げられる。
困ったドクター
日本に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がもたらされてから2ヶ月も経過していませんが、このところ急速に拡がりを見せており、収束の気配がありません。診断にはSARS-CoV-2に対するPCR検査が用いられています。今のところSARS-CoV-2の臨床診断を行うにはPCR検査しか方法がありません。このPCR検査をめぐって、テレビや雑誌といったマスメディアで「なぜ、希望者全員に検査させないのか!」といった感じで、いい加減な知識で発言を行う人が多いのが気がかりです。
テレビのタレントのコメンテーターが言う事ならまだ知識不足からくるもので仕方がないと思いますが、大学のセンセイの肩書を持つ人までいい加減なことを言っています。情報の受け手としては間違った情報を見分けて、それに騙されないように気をつけないといけません。

臨床検査の感度と特異度について

臨床検査を行うにあたって、感度と特異度の話を避けて通れません。どんな病気の診断を行う検査でも、100%の精度の検査は存在せず、一定の確率で間違った判断結果となることがあります。それを理解した上で、検査結果を評価しないといけません。ここで問題となるのが感度と特異度です。
Wikipediaによると感度・特異度は以下のように解説されています。
感度: ”医学における感度とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」として定義される値である。感度が高い(高感度である)、とは、「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する可能性が高い」、あるいは「陽性と判定されるべきものを間違って陰性と判定する可能性が低い」という意味である。"
https://ja.wikipedia.org/wiki/感度#医学における感度

特異度: "特異度(とくいど)とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。特異度が高い、とは、「陰性のものを正しく陰性と判定する可能性が高い」、あるいは「陰性のものを間違って陽性と判定する可能性が低い」という意味である。 "
"なお、検査に限らず、「Bという症状は、Aという疾患に特異的だ(特異度が高い)」という言い方をすることが可能である。この場合の意味は、「Bという症状があれば、Aという病気がないのに誤ってAであると診断してしまう可能性が低い」という意味、すなわち「Bという症状があればAを強く疑ってよい」という意味で使われることが多く、逆に言えば「Bという症状がないからAという病気はない可能性が高い」と言っているわけではない。厳密にはこのような文脈で言う特異度とは陽性予測度であり、こういう文脈で使われる特異性・特異度は、検査における特異度の概念とは異なっている。 一般的には、感度が高いと除外診断(rule out)に有用であり、特異度が高いと確定診断に有用である。"
https://ja.wikipedia.org/wiki/特異度
この最後の「感度が高いと除外診断(rule out)に有用であり、特異度が高いと確定診断に有用である」が大事です。
では一番身近な迅速検査であるインフルエンザについて考えてみましょう。
ある報告ではインフルエンザ迅速キットの感度・特異度はそれぞれ62.3%,98.2%と言われています。つまり、感度はまあまあですが、特異度が非常に高い検査と言えます。よって、除外診断にはあまり向かず、確定診断に有用な検査となります。(乱暴な言い方をすればインフルエンザキットで陽性ならほぼ間違いなくインフルエンザと言えるが、陰性でもインフルエンザでないとは言い切れない、と言う結論。)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR検査を感度・特異度から考えると?(全数検査を行ってはいけない理由)

SARS-CoV-2のPCR検査の感度・特異度はまだ十分にわかっていないところが多いですが、
感度:30-40%(高くても70%ほど)
特異度:90%
であるようです。

これをもとに考えると、感度は低く、特異度が高い検査と言えます。つまり、除外診断には向かず、確定診断に有用な検査となります。
よって、発熱・呼吸器症状といった臨床症状がある人(事前確率が高い人)のSARS-CoV-2の確定診断には有用であるが、単に接触しただけで症状がない人の除外診断には向かないと言えます。

なお、現在の「帰国者・接触者外来の受診の目安」(PCR検査を行う目安とも言えるでしょう)は、以下のとおりです。

(1)発熱または呼吸器症状があり、新型コロナウイルス感染症確定患者と濃厚接触歴がある 。
(2)37.5℃以上の発熱と呼吸器症状があり、発症14日以内に新型コロナウイルス流行地域に居住していた。
(3)37.5℃以上の発熱と呼吸器症状があり、「発症14日以内に新型コロナウイルス流行地域に渡航または居住していたもの」と濃厚接触がある。
(4)風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
(5)強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。

つまり現在の検査の対象者は臨床症状がある事前確率の高い人となっています。
すでに記したとおり、SARS-CoV-2のPCR検査は感度が低く特異度が比較的高い検査であり、確定診断に有用と考えられますので、現在の臨床症状で検査を対象とするかどうかを決めていること(確定診断に目的に検査を行うこと)は理にかなっていると考えます。
(この臨床診断の基準が適切かどうかは別ですが・・・)

もし、PCR検査を対象を制限せずに検査希望者全員に行ってしまうと、医療現場は混乱し外来機能が低下してしまうことになり医療崩壊につながる可能性もあります。正しい知識を身に着けて検査を行うべきです。
(どこかの国のようにドライブスルーのように希望者全員を検査することなんて・・・とんでもない!!正しい知識があればそのような判断にはなりません。)

なお、PCR検査は保険適応になりましたが、その検査の実施は厳格な院内感染防止策が行える医療機関に限られるため、当院を含め多くの診療所・病院は対応できません
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しての治療は確立されていない以上、現在の私達にできることは予防しかありません。

1.手洗いの徹底:外出先から帰宅した際や食事の前には石鹸での手洗いやアルコールの手指消毒を行う
2.咳エチケット:咳が出る場合はマスクを着用する
3.人混みを避ける
4.発熱や風邪症状があるときは学校・会社を休む
5.風邪の症状があれば毎日体温測定を行う

しばらくはウイルスとの持久戦が続きますが、ひとりひとりの力でこの危機を乗り切りたいものです。

【神戸市民・50歳以上の偶数歳の方】胃がん内視鏡検診は3月末までです!!

2020/2/27
内視鏡検診
 当院では神戸市胃がん内視鏡検診を行っています。神戸市在住の50歳以上の方で、今年度(3月末まで)に偶数歳になる方が対象です。今年度の対象年齢の方は4月以降(令和2年度)は内視鏡検診を受けることができませんので、内視鏡検診を検討されている方は3月末までの検診をお忘れないようにお願いします。


昨年は年度末に駆け込みが多く、結果的に3月末までに検査ができずお断りする方がいました。
検診を検討されている方はお早めに当院までお問い合わせください。
お問合せはTEL: 078-781-1838
かわクリニック